8月7日
今日は私の記憶に、いや、世界の歴史に一生残る日となるだろう。それほどまでに素晴らしい一日だった!
化け物に手をつかまれた時、私は思ったのだ。私の腕を這い上がる細かい蟲や大きな蜘蛛、赤黒い色をした得体の知れない深淵から覗く瞳、またはそれら全てが私をいっせいにおそった時、私は思ったのだ。私はこれを殲滅する必要があると。だから私は村に火をつけた。それは人間である私に課せられた天命!頬が火照っている。額から汗が流れるけれど、不思議なことに不快でない。寧ろそれが自分のした偉大な仕事を裏づけるもののように感じられ、心地が良い。燃えた、燃えたわ、全部!化け物が全部燃えた!いなくなったの!酸素が薄くてフラフラするけど、そんなことどうでも良かったの。ただ、化け物が消えたことが嬉しかった。
そして瓦礫の奥、見つけてしまったの
花、花花花花花花花花花花花花花花花花花花
あたまがおかしくなるほどきれいだったの!うつくしかったの!もういちどあれがみたいの!
死体から花が咲いたの。嘘じゃないわ。本当に見たの。
私はあの花をもう一度見るためなら、なんだってするのよ
蟲日記:終