幻覚のために動いて幻覚のために死んだ哀れな男。
彼が連れてこられたのは結婚式場。そう、愛する根津鈴子の結婚式の会場だった。震える手を伸ばした先では、根津鈴子が知らない男と親しげに腕を組み、こちらに手を振っている。
根津鈴子はおもむろに彼に近づくと、1枚のメッセージカードを手渡した。
『うちのウエディングブーケを作って♡』
嫉妬に荒れ狂いながらも、彼は心から根津鈴子を愛していたのだ。彼女が幸せならばと、心を込めた青いブーケを作った。
この時初めて彼は正しく愛を伝えられたのかもしれない。
しかし根津鈴子はそれを受け取ったかと思うと、床に叩きつけ踏み潰した。真心込めて作ったブーケを目の前で一瞬にして壊され、彼は驚き目を見開いた。
そして次の瞬間根津鈴子が取り出したのは大きな可愛らしいケーキナイフだ。刃はぎらりと不気味に輝いている。根津鈴子はそれを躊躇いなく彼に向け、右腕を、右足を、どんどん切っていく。立つこともできなくて、失血でぼやける視界の中、血まみれの手を根津鈴子に向けるも彼女は動きを止めない。最後に見る景色があなたの晴れ姿だなんて、僕は幸せ者なのかもしれないしれないなぁ。次の瞬間、ケーキナイフに串刺しになって意識は途切れた。
花一緒樹菜は死んだ。しかし、それだけでは終わらない。だってまだウエディングブーケがないから結婚式が始められない!
彼女が求めていたのはきっと青いブーケじゃなくて、赤いブーケだったんだ。ケーキナイフに綺麗な白髪が素敵な首と、大きくてまるで花みたいな手のひらと、アクセントに丁度よさそうな革靴を履いた足と、それととっても綺麗なアネモネみたいな目を刺して花束は完成。
これで幸せになれるね!