《そんなあたしとうってかわってお姉ちゃんはダメダメ》
お姉ちゃんが過去に男の子を橋の上で突き落として殺したことに重ねています。
錠前雷華は優等生だ。それ故に、大抵の事はそれなりに出来てしまう。
それは「ピアノ」においてもそうだった。錠前雷華はジャズシンガーであるが、ピアノも上手く弾ける。
しかし、「超高校級のジャズピアニスト」である姉には、どうしてもその点において劣るのだ。
錠前雷華は姉を見下していた。だからこそ、姉に負けることが何よりも屈辱的な事だったろう。
錠前雷華は雨の降った橋の上、グランドピアノがふたつ向かい合わせに置いてある所へ連れてこられる。グランドピアノに座らせられ、向かい側のグランドピアノを見る。するとそこには目を見張る光景が広がっていた。
前章で死んだ姉を模した人形が、笑いながらこちらを見ていた。
観客が二人を囲み、錠前雷華は「お姉ちゃん」と「錠前姉妹ピアノ対決」をすることになる。前述の通り、ピアノにおいて姉より劣る雷華はあっけなく敗北。ペナルティとして塩酸をかけられる。
全身に酸を浴び溶けていく体に悲鳴をあげながら姉の人形を見れば、それは変わらず微笑んでいる。雷華が苦しんでいるのに、微笑んでいる。それはかつて自分が姉にしたことと同じだ。死に際になってやっと気がついたのだ。
姉に手を引かれ、愛おしそうに頬を撫でられる。次の瞬間、ドンと体を押され、橋から落下していた。